3. 秘匿されがちな手順を公開！「裏キルト防寒着」刺繍抜きの全工程

ここからは、実際に刺繍を抜く具体的な手順を、プロの視点から解説します。

1. ステップ1：表面の保護と糸くず対策（ガムテープ）

   まず、刺繍が施されている表面全体にガムテープを貼ります。これは単に目印のためだけではありません。作業中に切れた糸くずが周囲に散らばるのを防ぎ、また、刺繍を抜き終わった後に残った細かい毛羽立ちや糸の残骸を、一気に剥がし取るための準備作業です。

2. ステップ2：裏側からの慎重なカット（I字剃刀）

   いよいよ本番です。作業着を裏返し、刺繍の裏側に露出している糸の束に対してI字剃刀を当てていきます。この時、絶対に生地に対して垂直に刃を立ててはいけません。

   I字剃刀は、生地と平行に滑らせるように動かし、刺繍の糸だけを「削ぎ落とす」イメージでカットしていきます。裏キルトの場合、キルトの縫い糸まで切ってしまわないよう、非常に慎重な作業が必要です。動画内でも、裏地を削ってしまわないよう、細心の注意を払っている様子が確認できます。

3. ステップ3：表側からの最後の追い込み（I字剃刀）

   裏側からの作業で大半の糸が切れ、刺繍のボリュームが減ってきたら、今度は表側からもI字剃刀を使います。

   これは、表面に残った、裏からではアクセスしづらかったごくわずかな糸の輪を、優しく削り取る作業です。ここでも力を入れすぎると表生地を傷つけるため、剃刀の刃を立てず、寝かせた状態で優しく撫でるように作業を行います。

4. ステップ4：残りの糸を完璧に除去（ピンセット＆ガムテープ）

   ほとんどの刺繍が抜けた状態になったら、仕上げに入ります。

   • ピンセット：まだ生地の織り目に残っている、しつこい短い糸を一本一本丁寧につまみ出します。この工程こそが、仕上がりの美しさを左右します。
   • ガムテープ：最後に、表面全体に貼ってあったガムテープを剥がします。カットした糸くずや、表面の毛羽立ちを一網打尽にし、まるで刺繍が最初からなかったかのような、クリーンな状態に仕上げます。

動画の結びでは、裏地がわずかに削れたものの、着用には問題なく、表面は非常にきれいに仕上がったとコメントされています。この結果こそが、慎重に、かつ正しい道具と手順で作業することの重要性を物語っています。