現場を愛する男たちにとって、ドカジャンは単なる防寒着ではない。共に泥にまみれ、寒風を凌いできた戦友だ。
そんな時、諦めて新調するのも一つの手だが、職人なら自らの手で再生させてみたくはないか?今回は、裏キルトが施された重厚なドカジャンを舞台に、カミソリ一本で刺繍を抜き去る「男の再生術」を伝授する。
一筋縄ではいかない刺繍糸との格闘。その一部始終を網羅した。
1. 研ぎ澄まされた道具選び:カミソリが運命を決める

刺繍取りにおいて、最も重要なのは「切味」と「刃の形状」だ。
動画では、広範囲をカバーするT字カミソリと、細かい隙間に潜り込むI字(顔用)カミソリを使い分けている。
特に防寒着のような肉厚な素材の場合、生地を傷めずに糸だけを捉える繊細さが求められる。
さらに、抜いた糸を確実にキャッチするガムテープと、最後に残った「しぶとい一分」を引き抜くピンセット。
この4種の神器が揃って初めて、刺繍との戦いに挑むことができる。
2. 戦略的な下準備:ガムテープの知られざる役割
いきなり刃を入れるのは素人の仕事だ。プロはまず、刺繍の表面にガムテープを貼る。
これは単なる清掃用ではない。裏から刃を入れた際、切断された糸がバラバラにならず、ガムテープに密着して保持されるためだ。
これにより、生地の中に糸屑が潜り込むのを防ぎ、最終的な仕上がりの美しさに圧倒的な差が出る。
「急がば回れ」。この一手間が、職人の仕事の質を左右する。
3. 実践、刺繍抜き:裏キルトとの対峙

いよいよ本番だ。ドカジャンの裏側、キルト面から刺繍の土台を狙う。
カミソリを寝かせ、糸の目を断ち切るように滑らせていく。
動画内でも触れられているが、素材が柔らかい場合は刃が食い込みすぎるため、力加減が非常に重要だ。
少しずつ、確実に。糸が浮き上がってくる感覚を指先で感じ取りながら進める。
裏地のキルトが多少削れることを恐れてはいけない。それは、再生という目的のための「必要な犠牲」だ。
4. 表面の仕上げ:美しさは細部に宿る

裏側からの攻略が終われば、次は表面のクリーニングだ。
ガムテープを剥がすと、多くの糸が一緒に取れてくるが、まだしぶとく残る糸がある。
ここで再びT字カミソリの出番だ。表面を優しくなぞるように糸を刈り取っていく。
最後はピンセットを使い、生地の隙間に挟まった小さな糸を一筋ずつ抜いていく。
この地道な作業こそが、元の刺繍を「無かったこと」にする魔法の工程だ。
5. 完成、そして再生へ:キズさえも勲章
作業を終えると、そこには刺繍の跡がうっすらと残るかもしれない。
しかし、遠目に見れば全く気にならないレベルまで再生できる。
動画の最後でも語られている通り、裏地のキルトに多少のダメージは残るが、着用には全く支障はない。
むしろ、自らの手で手間をかけ、刺繍を抜き去ったそのドカジャンには、新品にはない愛着と「凄み」が宿る。
さあ、あなたもクローゼットに眠る一着を、この技術で戦列に復帰させてみてはいかがだろうか。
刺繍を抜いてでも着たい、極上のドカジャンはこちら
刺繍を入れるのも、抜くのも、すべては「お気に入りの一着」のため。
アルベロットユニでは、プロの眼で選んだ高品質な作業服を多数取り揃えています。







